第八話




そろそろ、僕はなれるべきだ。

菅野くんと一樹が仲良く笑い合う姿に、どうしてももやもやしている。


二人が付き合いだしてどれだけの日が立つっていうんだよって、一人突っ込みをして、少し落ち込む。

一樹が僕でも見たこともない顔をして、とても幸せそうに笑ってくれるのはとても嬉しいことだから、菅野くんにお礼を言ってもいいんだよ。

だけど、なんか、気にいらない。


あ〜


「小雪?」

大丈夫かと、一樹が僕の顔を覗き込んできた。
僕は突然のことにお弁当を握ったまま跳ね上がった。


「え! わ、大丈夫!」

違うんだよ、って僕は言いわけを考える間もなく「ただね、今日のお弁当がちょっと気分じゃないなって思って。そんな我儘な自分に嫌気がきちゃったの」なんて勝手に口は動いた。

すると、菅野くんと一樹は固まって、しばらくしてから、前のめりに、

「「俺の弁当に気分なものがあったら、交換してやるから!」」

なんて言う。


あ〜


なんで僕は二人に気を使わせてしまっているんだろう。

「え、いいの?」

気持ちとは裏腹に、一層僕の声は嬉しそうに高くなる。

「「いいって、小雪のためだったら、昼が食べられなくてもいい!」」

「見事にハモってるね〜」

僕はまた笑った。

せっかくこうして教室で三人仲良くお弁当を食べられているんだもん。駄目だよね、一人落ち込んだら…


「ちょっとよかったら、俺のからも取れ」

「え?」

急に二人とは違う誰かのお弁当が僕の前に出てきて驚いた。顔を上げると、わいわいとクラスメイト達がこっちに集まってきている。

「俺も、北王子、勝手に横から悪い、誰だって同じ気持ちだ!」

「そうだ、俺の弁当、欲しいものあったら、ここからも取ってくれ!」

「そうそう元気ない北王子を見てたら心配だって」


「みんな、ありがとう」


僕は、落ち込んでいたことが、馬鹿らしいと感じた。






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