「わかった」

わからないんだったら、しかたないって菅野は俺の手を引いた。

俺は焦った。
こんな人目のあるところで何を考えているんだろう。

でも、俺は菅野の手を振り払うことなんてできず、ただ戸惑いだけが心に積もった。


「でも、中佐都。わかっていることは俺に教えてくれ。俺は、中佐都のこと知っておきたい。楽しいことだけが大切なんだと思わないでな」

「……え?」

楽しいことが大切じゃないのか。
俺は菅野にそう聞き返したら、菅野は「より深くかかわるなら、ちょっと苦しくても理解し合うことも大切。後ろめたいことでも二人で分かち合えたら、ちょっと切なくても、何処か温かいと俺は思う」とか言ってくれた。

俺はなんて馬鹿だったんだろうって思った。

楽しいことだけを感じて、幸せを見失わないようにって、そんな考えをしてしまうことで、もしかしたら、俺は中佐都のこと否定しているようなことしていたのかもしれない。


「そうか、俺、もう…」

「中佐都」

「そっかぁ…」

俺の手を握ってくれている手、握り返したら、また、握り返してくれる。温かい。

「菅野、ありがとう」

「え?」

「だから、ありがとう」

「何が?」

「何でもないよ」

「何、笑ってんだよ、何がありがとうなんだよ、俺にもわかるように教えろ!」

「えー」






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