5
「でも、守くん、私はちょっと不安だな」
「え、なんで?」
私は自信が常になさそうな中佐都くんを思い出した。
「守くんは、幸せって怖い?」
「どういう…こと?」
「幸せだと、その幸せがなくなることに、恐れちゃって、辛くなることかな」
「……それは…とても…つらいと、思う」
「そうだよね。幸せなのに、幸せになりきれないってね」
私にできることなんて何があるってわけじゃないけども、私は中佐都くんが心配になった。
無理しているから。
「それに、辛いのに、辛くないんだって笑う気持ちも、見ていたら…」
「先生…難しいこと、考えすぎだよ?」
「守くんにそれを言われるなんて、私って考えすぎかな?」
「ううん。でも…俺は、先生が困っている姿は…俺以外の誰かで見たくない」
「……たまに守くんは頼もしいなぁ」
「どこが?」
守くんはクスクスと笑った。
「私ね、守くんといたら、落ち込むこと減っちゃうんだ」
「本当に?」
「うん、いろんなこと考えちゃって、落ち込んでられなくなる」
「それって…ほめているのかな?」
「…どうだろう」
私は言葉を濁した。だけど、やっぱり伝えたくて、また言葉を紡ぐ。
「守くんが好きってことかな?」
「先生、あの…キスしたい」
「…いい、よ」
[*前] | [次#]
目次に戻る→