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「あ、病院の前で立ち話もあれだし、中に入る?」

「え、いいの?」

俺はもう先生の患者さんじゃないのに…

「いいよ、時間あるし」

「じゃあ、その、久しぶりに…」

「うん、どおぞぉう!」

遠慮しないでずっと入ってとか言いながら先生は俺の背中をおした。
相変わらず、力がない人だなって思った。

本当に懐かしい。
病院の中も、何も変わっていなくて…


「菅野くん」

「え?」

急に俺の背中を押す手から力が抜けた。


「ここにきたら、辛かったこと、思い出さない?」


「思い出さないと言ったら嘘かもしれないけど、俺は、それに悲観はしないよ。後ね、今日、俺がここに来た理由は、先生に謝りたかったから…」

「なんで?」

菅野くんは僕に何を謝ることなんてあるの、なんて先生は聞いてくる。

「覚えてない? 俺、先生の言うことに怒鳴って批判したこともあった。椅子を投げ飛ばして帰ったこともあった。先生なんて嫌いだとか言ったこともあった。傷つけてばかりしていた…」

「菅野くん。確かに菅野くんは僕の言ってくること批判した。でもそれは菅野くんには菅野くんの考えがあったからのことだし、椅子を投げたのは、そうだな、そこに椅子があったからだと思うし、先生は嫌いだと言われて確かにショックだったけど、菅野くんは次のカウンセリングには来てくれた。傷つけたって、いうのも否定はしないけど、僕ってマゾだから平気だったりして」

あはは、と先生は笑った。






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