15
「菅野、俺は、菅野を置いていくように、見えるか?」
「え…」
「違う…責めていない。ただ、もしも俺のこと信じられなくてもいいから、隣にいてほしい。あのさ、俺、菅野が」
「馬鹿」
「え?」
「ありがとう」
「なんで、俺、何も」
何もできてないのに、なんで、と
中佐都は困ったように言葉を紡いだ。
俺はただ中佐都を抱きしめていた。
「俺のこと、今、たくさん考えてくれただろ?」
それが嬉しかったんだと俺は言った。
小雪は言っていた。
菅野は、考えすぎて、悩み過ぎて、重たいと言われてきたんだと。
だったら、俺と一緒だ。
かつての俺と同じ。
人は善だと信じて、疑わず、好きになって。
自分が相手を好きな分、相手にも自分のことを好きになってほしいとか
じゃないと不公平だとか…
でも違ったのかもしれない。
俺、今、ただこんなにも中佐都のことを好きだって思えることが嬉しい。
「嬉しいんだ…ただ、たださ」
どうにかしてこの感情をつたえようとしたのに、言葉は見つからなった。
でも「菅野が、嬉しいなら俺も、嬉しい」と腕の中の恋人は言う。
ホントウダ、コユキノイウトオリ
中佐都の純粋さというか、優しさというか、そんな綺麗なものに俺は似合わない気がした。
どうして、俺は自分が不安だからって、中佐都にこんな話したんだろう。
俺、中佐都のこと、好きなのに困らせた。
醜い感情は君に似合わない。
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