13
「ごめん、嘘、吐いちゃった」
俺は中佐都を教室から呼び出して屋上まで連れてくると、そう言った。
すると、中佐都はホッと息を漏らして、微笑んだ。
「…ありがと、菅野」
「え、なんでお礼なんて言うんだよ?」
俺はその見当がついていながら、あえて質問した。
俺は中佐都の口から聞きたいと願ったんだ。
だって、俺は、小雪から聞いただけで、中佐都から聞かされたわけじゃないし、さっき、教室でクラスメイト相手に言った「嬉しい」の言葉、信じたくないんだ。
信じたくない。
みんなと仲良くなるのはいいことだよ。
だけど、俺は、俺から中佐都が離れていきそうで…
「菅野…?」
「ぇ」
「大丈夫…顔色、悪いけど」
「平気」
「平気って、そんな風に見えないけど」
あたふたと中佐都は伏せた俺の顔を覗き込んできた。
「…中佐都っ」
「うわ!」
俺は勢いよく中佐都に抱きついた。
ああ、格好悪いよ、俺。
「俺の話を聞いてほしい」
「…うん」
「本当に、どうしようもない、し、聞いたって疲れるだけかも、だけど、俺、不安…になるから」
「聞くよ。俺、菅野のこと、もっと知りたい」
「中佐都っ」
「ちょと痛いって」
「俺を、置いていかないでくれよ…?」
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