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=北王子side=
ゆっくりと、歯車が狂うのを見ているのは嫌だと思った。
だから僕は菅野くんに一樹のことを話した。
だって、菅野くん、一樹が他のクラスメイトに囲まれて、嫉妬していたから。一樹はただ不安で菅野くんの後ろに隠れようとしていたのに。
菅野くんは自分のことで精いっぱいで気がつかないでいたね。
それがどれだけ歯がゆいかなんて僕以外感じることもないけどさ。
「小雪、あれ、中佐都は?」
教室に帰える途中の廊下で賢也はご機嫌に話しかけてきた。
「教室にいるよ?」
「そう…」
「まぁ、賢也は倉木くんと仲良くてうらやましいな」
僕が前、倉木くんと少し話していたら、すっごい嫉妬していたくらいだし、好きなんだろうなって思っておちょくりをかけてみたら、賢也は顔を赤くして首を縦に振った。
どうしよう、これ、上手くいったんだ。
今、人の惚気話なんて聞きたくもない。
「よかった。じゃあ、僕ね、急いでいるから」
「小雪、その、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ、僕はとっても頑丈だからね!」
賢也は倉木くんのことだけ大切にしていたらいいんだよ、と僕は笑いながら手を振った。
これでも、僕はいつだって、この性格を誰かが気づいて、受け入れてくれないかと願ってはいる。ただ望んではいない。
けど、一樹のことを菅野くんは知るべきだし、理解するべきだと僕は思う。
だって恋人なんだ。
ずっとずっと人生を支え合っていく、パートナーなんだ。
それはとても特別だから…
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