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中佐都は俺に世界をくれた人だと思う。
俺は誰かに心を開くことが怖くて、一人で世界を完結させていた。
1番であることで人のことを見下して、もう自分とは違うから、相手にしなくてもいいと思っていた。
俺は信じるということができなくなっていたんだ。
誰も…
でも屈託のない瞳で、中佐都は俺に生徒手帳をあの日、届けてくれた。
何でもないような顔していたけど、本当はすごく探し回ってくれていたんだと思った。
中佐都は、無愛想だから、誰もが、誤解しているけど、根はいい奴だ。
俺はわかっているんだと、俺だけは周りとは違うんだとうぬぼれていた。
だけど、蓮見先生も中佐都のそういったところに気が付いていた。
嫉妬した。
俺は自分の気持ちと向き合うのが辛かった。
だから、中佐都のことは忘れようとした。
でも、さ、学年テスト。
俺が1位になるって思っていたのに、俺の名前は2位にあって、
堂々と満点に近い点数までさらして、中佐都の名前は大きく1位にあった。
結果発表を見に来た生徒は口々に言った。
『中佐都って誰?』と。
俺は、それが、何よりも、怖かった。
だけど、1位が取られて、悔しんだと、
俺は思うことにした。
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