12
=菅野side=
「……よぃしょ」
俺は保健室の扉を無断で開けると、中に入ってカギをかけた。
そして、ベットに中佐都を転がして、近くにパイプ椅子を持ってくる。
さっき家に帰ろうかと暗い廊下を歩いていたら、目の前で中佐都が、横に倒れていこうとしていた。
俺はとっさに走り出して、なんとか、中佐都が廊下のタイルにたたきつけられないように支えたけども、思いっきり抱きしめるかたちになってしまった。
だけど、中佐都はそこでもう意識はなくて、ただぐったりと辛そうに「ごめんなさい」と繰り返して、口にした。
今も、している。
何をそんなにも謝ることがあるのだろうか。
俺には到底理解できなかった。
でも、俺は中佐都の額に手をのせるとゆっくりと頭をなでた。
「もう、いいんじゃないかな?」
そんなにも苦しむことなんてないんじゃないかな。
無責任にも俺はそう言って、中佐都を見つめる。
見た目ではそんな風に見えないんだけど、華奢な中佐都の、隣で。
「…本当、に?」
「ああ、本当にもう過去のことなら、いいんじゃないのか?」
過去は変えられないから、しかたないんじゃないかなって俺の口は言葉を紡いだ。
そんな理想論、俺も信じられないのに、どうか、そうあってほしいと。
「そっか…」
ならよかったと言いながら中佐都は静かに微笑んだ。
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