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俺は性格が悪い。
昔はあんなにもよかったのに、今じゃ、誰も信じられない。
人は「善」だと信じていたのに、今じゃ「悪」だと考える。
怖くて、ただ勉強に逃げて、孤独になった。
でも俺は人を見下すことで自分を保つことができた。
なのに…
高校に入って中佐都に出会ってしまった。
入学式の日、俺の落とした生徒手帳を必死になって届けてくれた人。
あの時、俺の中で何かがはじけた。
ときめいたっていうの。
どきどきしてたまらなかった。
言葉数も少なく、俺にお辞儀をして、そくさかと君は逃げたけど…
俺はずっと君のこと追っていた。
名前も知らなかったけど…
俺は君のそばにいられたらいいのにって、夢を見た。
君はいつも一人ぼっちで、俺と同じだったから。
でも、俺が君の名前を知ったころ、
俺の唯一を君は取ってしまった。
中佐都一樹。
学年テスト1位の欄に堂々と記されていた。
俺は2位だった。
1位との点差は激しいもので、愕然として、俺の中で何かが壊れる音がした。
醜い感情が溢れるばかりだった。
中学生の時、封印したのに。
ああ、報われない…
必死になって没頭したら、勉強は俺のこと特別にしてくれたのに、中佐都に負けた。
中佐都のほうが頑張っていたと知らないわけじゃないけど、俺はただ結果しか見えなくて…
2位…それでも充分だと、母は言ってくれた。
でも違うんだ。
1位である。
それが俺にとって大切だった。
俺の、ほんの些細な、プライドだった。
「どうしてだよ!」
今になって思えば、どうしてそんなことを俺は考えていたんだろう。
中佐都の照れ隠しを思い出す。
俺に生徒手帳を届けてくれた時の…
――――好きなのか…?
俺、中佐都が―――――
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