「え?」

俺は突然に冷たい言葉に、返事ができなかった。

「だから、くーちゃんは勝のことなんてどうでもいいのよ。なんとも思っていないのよ」

わかるでしょ、と母は言った。俺はその母の表情がとても怖かった。

「どうして…?」

「どうしてって、どう考えてもそうでしょ?」

「そうなの?」

「ええ」

そうなのか…と俺はこの時、納得した。
母がこんなにも真剣に言うんだから、そうなんだろうと。

でも、そんなこと信じたくなかった。
俺は誰かを恨んだりしたくなった。

きっと誰も悪くなくて、今回の貯金箱事件も運が悪かったんだろうと、思っていた。
思っていたかった。

でも、一度感じた亀裂のせいか、俺はくーちゃんのこと、否定的に見てしまうことがあった。

埋まらない何かがそこにあることに気がついた。
それがなんなのか、幼い俺には理解できなかったけど、後になって気がついた。

俺は大切な貯金箱を壊されて、傷ついていたんだ。

ただそれだけだった。


ただ癒えないだけだった。






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