=菅野side=


北王子とさようならをして、俺は一人、廊下を歩いていた。

外は雨が降っていた。

曇った空はとてもじゃないけど、重々しい何かを感じさせる。


「はぁ…」

最低な日だ。今日はきっと最低な日。
俺は、知っていたのに…

忘れてしまっていたんだ。



*****


その頃の俺はまだ小学生だった。
屈託のない少年だった。
人が好きだった。
一人が嫌いだった。
孤独は…耐えられないものだった。

「勝、何を泣いているの?」

「お母さん、だって、だって、くーちゃんが、俺の貯金箱壊したんだ」

くーちゃんとは幼稚園から一緒のクラスのお友達。
俺の一番のお友達。
でも、俺の貯金箱は、俺のお父さんの形見だった。

「何をそれくらいのことで泣いているの。勝は悪くないんだから、泣かなくていいのよ。それに、そんなことするだなんて、そこまでの関係なのよ」

母はそう、言い捨てた。






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