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僕の隣に一樹がいて、
僕が紡いだ言葉に返事をしてくれる。
手を伸ばしたら触れられて、
一樹は照れたように笑ってくれる。
それがとても幸せで嬉しい。
僕は一樹が好き。
そして、一樹が好きな自分が好き。
感情はここにあるって。
世界は僕の外じゃなくて、
僕の中にあるんだって思えたから。
変な話だけど、そういうこと。
僕にとって一樹は、僕に世界をくれた人。
菅野くんならわかってくれるかな。
一人よがりで、雑な説明だけど、
僕はそれを菅野くんに話した。
菅野くんはただ頷きながら、切ない顔をしていた。
「でも、それって悪いことなのか?」
「………え?」
「ただ、好きなんだろ、理屈とかいらねぇんじゃないの?」
「あ、そうかもしれないね」
でも、菅野くんは、もう少しだけ一樹のことを見ないといけなかった。
だって好きなのにその好きな人の感情にこたえられないなんて、
僕が怒るよ。
「菅野くんは、勘違いしているんだよ」
一樹に必要なのは僕じゃないよ。
菅野くんだよ…と僕は声を絞り出した。
泣いてしまうなんて格好悪いと思って必死になって涙をこらえた。
すると菅野くんは優しい微笑みで、僕の頭をなでた。
反則だ…
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