第四話
=菅野side=
完全に中佐都は俺を、見なくなった。
あからさまに、俺のことを避けるようになった。
前からだってそんなに近くにいたわけじゃないけど、今は本当に避けられている。
どうしてだろう?
俺が北王子と付き合っているって北王子が中佐都に言った日からだ。
もしかして、中佐都は同性愛とか気持ち悪いと思う人だったのか…?
だったら避けられてもしかたないのかもしれない。
でも、さ、俺が求めていたのはそんなものじゃない。
中佐都が、俺を、もっと、見つめてくれることだ。
ただ、それだけだ。
俺は君から君の一番大切なものをとったはずなのに、君は俺のこと見てくれない。
まるで、何でもないかのように、振る舞う。
その視線が震えていること、俺にはお見通しだけど。
「なぁ、北王子」
俺はお昼休み、北王子と弁当を広げながら、視界の端に中佐都を映した。
「俺、弁当は、他にも食える奴いるし、お前は友達を大切にしろよ」
そうだ、中佐都をお昼一人にしたらいけない。
中佐都は北王子がいないとダメなんだ。
仏頂面が、ほら、寂しそうに、している。
「えーどうして、菅野くん」
「……どうしてかは自分の胸に聞いたら?」
「わかった」
ごめんねとか言いながら、北王子は俺の机の上に広げていた弁当を片づけると、中佐都の方に走って行った。
「一樹ぃ」
なんて甘ったるい声、出してさ。
俺といるときは決して出さない声。
中佐都だけ、北王子の特別。
俺、さ、わかったよ。
北王子も中佐都が好きなんだって。
そう言った意味の好きなんだって。
だから、北王子は、俺に、好きだなんて嘘をつくんだね。
残酷な世界だ…
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