追跡・1




その夜、田辺は旅立って行きました。
その夜、ミチユキも遅れて帰ってきました。


「ミチユキまた、おきて、破りした」

「いいじゃん、俺は別に神さまに願うことなんてないしぃ」

「いいけど…さ」

なんかそれはそれで寂しい気もするんですよね。
別にミチユキなんかに頼られたいわけじゃないんですが。


「てか、田辺は帰ってきたよな…」

心配そうにミチユキは聞きました。


「田辺はまた降りたよ、下に」

「は?」

「だから、降りたの、下に」

「え、マジで、なんで、あいつ、え、消してくれって言わなかったの?」

「うん」

「んだよ、俺、もうダメだってくよくよしてたのに!」

「あはは、馬鹿だぁ」

「…馬鹿だよ、俺、どうせ、馬鹿だし」

顔を少しほころばせてミチユキは涙を流しました。


俺はそれをからかえません。


知っているつもりでしたから。
俺だってミチユキのその気持ちは知っているつもり…






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