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不器用でも
不器用でもこの瞬間を
まだ上手にできないけど
すべて君だと抱きしめた。

ずっと逃げていてごめんなって言葉、
いつか笑い話になればいいのに…
そんなこともあったんだなって
幼かったなって、じいさんになっても
一緒にいて、
一緒に、手をつないだりして、

いつか笑い話になればいいのに…


笑い話にできるくらい、
幸せになれたらいいのに…

あ、違うか。
なれたらいいのに…じゃない。
なるんだよな。


これからはちゃんと向き合おうって、
お互いのこと理解していこうって
さっき話したばかりだったな。



「蓮見先生」



優しい声で俺を呼んでくれた人。
俺はあの日から、どうしようもない君の優しさに甘えていた。


「倉木…賢也って呼んで欲しいな…」

「ぅん、賢也…僕も、名前で」

「考示」

「わぁ、蓮見せ…賢也」

「う?」



「僕ね…もう、一人で消えたいなんて考えないよ」



「あたり、前だ」

「えへへ、そうだよね…」

「そうだよ…」

「うん」


優しい声で俺は君を呼べている?



答えは何処にもないけど、
君はここにいた。



ただそれだけのことが
とても大切なことだと俺は

今、わかった。






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テーマ「人外ファンタジー」
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