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言葉にするのが怖かった。
だけど、誰かに知ってほしいと思った。
小雪なら、受け入れてくると思った。
最低だな。
「答えを求めない相談なんて、僕が寂しいじゃん…」
それに、賢也には僕じゃなくて倉木くんがいるのに、そんな話をしたらダメだよ、
小雪はそう言って俺の頭をなでた。
優しい手。
「賢也…ごめんね」
「え、なんで小雪が謝るんだよ!?」
「だって、僕は何もできないから…」
「…え?」
「あっ、なんでもない! ごめん、暗くなっちゃった」
えへ、と小雪は笑おうとして失敗する。
俺はそれに気付かないふりをする。
だって、小雪は俺にそれを求めていないから。
俺に心配されたいとか求めていないから。
何でもないふりをする、それが俺の精いっぱいの小雪への気遣いだ。
でも…
「辛いことあったら、賢也お兄さんに相談しろ!」
な、と俺は笑った。
すると小雪は「馬鹿…」と俺を頭をたたいた。
地味に痛かった。
「僕に相談されたいなら、まずは、自分のことちゃんとしてよ!」
ほら、さっさと家に帰って倉木くんと話しなさい。
小雪はそう言って微笑む。
悲しいのに温かい微笑みだった。
「ああ」
ありがとうと俺は言って、公園を後にした。
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