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「…何してんだよ、俺…」
無理やりに君を抱いて、俺は今何を得たのだろう。
「こんなつもりじゃなかったのに…」
ああ、もう、なんて言っても言い訳にしかならないんだろうな。
ぐったりとしている倉木をベットに運ぶとそこに寝かした。
倉木の後ろの後始末をしながら、俺は思い出した。
『言葉よりも確かなものってあるのかな?』
『人は嘘をつくことができるから』
『上辺だけって本当に悲しいから…』
君は世界に絶望したのだと言った。
『時たま…無性に消えたくなる時がある』
『先生は自分の存在がわからなくなることってある?』
君は存在の確信がないと言った。
『ううん、僕は先生に出会えたこと、嬉しいから、生まれてよかったかな…』
『意識の問題らしいよ?』
君は前向きになると言った。
『簡単だと言われても…僕には理解できないの…』
『愛されている人みたら…嫉妬しちゃうから、そんな自分が嫌い…』
君はそれでも葛藤すると言った。
『どうして先生は僕の隣にいてくれるの…なんて嘘だよ』
『ね…好きでいて』
君は昨日の夜俺にそう言った。
不安なんだって。
なのに、俺は自分のことで精いっぱいだった。
いつもいつも君の言葉をただ聞いているだけで…
「俺こそ価値ないじゃん…」
励ますとかそんなことも考えられず、君をただ抱いて。
俺は…何がしたかったのだろう。
倉木の言葉を真剣に聞こうと思ったのに…
簡単に拗ねて、自分なくして…
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