30
「じゃあ、どこ?」
「え…ぁ」
その…と黙りこむ倉木が可愛くて愛しくて、俺はたまらなくなった。
「教えてくれないと、わからないよ?」
「…あの、右が…いい」
「ここ?」
「ぁひゃ…あ、ぁうん、そこっ」
「気持ちいい?」
「あ、ぁ、きも…ちいい、よ」
気持ちいい、確かに倉木はそう言った。
倉木の身体だって喜んでいる。
ああ、なのに…
「どうして、倉木は泣いているんだ?」
君の瞳からぽろぽろと流れる涙に俺は戸惑った。
生理的な涙じゃないことくらいわかる。
こんな俺にだって、それくらいは、わかる。
「倉木…答えてよ…」
「………泣いてないから」
君は見え透いた嘘をついた。
俺の気持ちを踏みねじって…
「そう、なら、いいんだ」
「ぁや、蓮見、せんせ…?」
俺は体制を取り戻すと倉木を床に押し倒した。
「続き、しようか?」
言葉で通じないなら、その身体に訴えてやる、だなんて、俺、本当にガキだなって気がついたのは、
倉木が疲れて意識を飛ばした後だった。
そう、すべては後の祭り。
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