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「平気…だよ?」
「嘘、吐くな!」
「嘘じゃない…っ」
「身体、震えているのに、怖かったんだろ、本当は!」
倉木は俺に抱いてと言ったけども、その時、唇は震えていた。
今だって、震えているじゃないか。
なぁ、どうして強がるんだろう。
俺は無理をさせているんだろう。
「倉木、俺は…」
「聞きたくない!」
「え、うわぁ」
勢いよく倉木に押し倒された。
床にぶつかった背中と頭が痛い。
さすがにこれは倉木相手でも俺は怒る。
そう思って顔を上げようとしたら、倉木は俺の唇に自分の唇を合わせてきた。
必死、すぎる。
目じりには涙が溜まっている。
どうして、君は、口数が少ないんだろう。
どうして、君は、俺にキスをしているんだろう。
真相は倉木の心の中にしかないのに、
俺はぼんやりと考えた。
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