26
ピーポンと、チャイムが鳴った。
俺はインターホンで「カギは渡してるんだから」と言った。
すると、のろのろと俺の家の扉が開いた。
倉木は遠慮がちに中に入ってきた。
俺は「おかえり」と言った。
倉木はただ俯いて俺に抱きついてきた。
どうしたんだろう。急に。
「……て」
「え、倉木、なんて?」
「え、あ、なんでも、ない」
なんでもないよ、と言いながら倉木は俺から離れた。
俺は離れた倉木の温もりを追って、今度は俺から抱きしめた。
相変わらず華奢だ。
「…蓮見、先生?」
「何?」
「僕のこと、好き?」
「え、急にどうしたんだ?」
俺は驚いて聞いた。
倉木は、言葉を信じていないところがあって、いつも確かなものは言葉よりも態度だとかそういった行動をしていたのに。
「…前にも言ったけど好きだよ」
「本当に?」
「本当だって」
「じゃあ…」
抱いて、と、倉木は言った。
俺は、先走りそうな欲望を抑えて、首を横に振った。
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