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中庭にある水道で腕を洗ってから、僕は先生に右手を出した。

すると先生は僕の手首から腕にかけて、本当に悲しそうな目をして見つめる。


「先生、僕は、別にこんな傷、どっちでもいい」


知っていても知らなくても。
上辺だけの傷だから。

だって、これを見たからってその人に僕の何がわかるっていうの。

「蓮見先生が、僕のこと、まだ好きでいてくれたら、それでいい」

他に望むものなんて何もない気がした。
ただ、こんなの見て、先生が幻滅しなければいいのに…


「…倉木」

「何?」

「俺、倉木のためにできることある?」

「…好きで、いて、ほしい、な…」

「……倉木、俺、人の愛し方、わからないけど、それでもいい?」

倉木のことは好きだけど、大切にしているつもりだけど、上手く出来てない俺だけど、
そう言って先生は俯いた。

僕はそんな先生の頬に両手を伸ばすと、キスをした。

「僕、口下手だから…上手いこと言葉じゃいえないけど」

これが僕の答えだと口にして、僕は先生に微笑みかけた。



「僕なんかのことで落ち込まないで…」







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