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=倉木side=


存在の価値を探していた。
いつも僕は考えていたんだ。
世界から自分が消えたらどうなるのかとか。
考えて悲しくなった。
きっと何も変わらないと思った。
誰も見向きもしないって思った。
続いていく日常だって何も変わりはしない。
それが怖かった。
僕は生きているのかって考えた。
わからなくなった。
昨日と今日の違いがわからない。
もしかしたら、僕は騙されているんじゃないかって考えた。
世界は廻っているように見えて本当は停滞しているんじゃなかって。
怖くて、不確かで、不気味で。
何もかも実感がなくて…わからなくて、
ただわかるのは痛みだけで…
だから、切った。

切ったら傷になった。
不安になったらその傷を見つめることにした。
そうしたら、僕は生きてきたんだなんって思えた。
本当に端的な話だけど、僕にとったら重要なことだった。
昨日の傷は、今日につながった。
僕は確かにここにいるんだって、生きてるんだって、
思えた。あ
それと同時に、僕は怖くなった。
リストカットをしているなんて…周りに誰もいない。
僕はおかしいんじゃないかって思った。
やめようとしたけど、
孤独感には勝てなかった。
切ったらまた、僕は世界から遠くなるのにそれでも
切らずにはいられなかった。
気付いてほしい。
でも気付かないでほしい。
そんな気持ちも抱えながら、僕は
生きてきた。



こんな話、先生にはしたくなかったけど、
あとでちゃんとしようと思う。



「ちゃんと後で見せるから、水道のあるところ…に」


ただ僕は、加藤の唾液が残る腕なんて先生に見せたくなかった。






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