18
「倉木の右手、見たことないんですか?」
「え?」
俺は腕の中で俺の服をつかんで震えている倉木の右手を見ようとしたら、
「やだ、見ないで!」
拒否された。
「最低ですね、俺、先生がそんなことも知らないでいたなんて思いもしませんでした」
加藤はそう言い残して、俺たちの前から消えた。
俺は、いきなりのことに、思考がついていかなかった。
「ね、倉木、お願いだから、右手、見せてよ…」
俺は自分でも情けない声で、倉木に言う。
倉木は俺の腕の中で小さく首を振った。
「…ぃや」
「どうして…?」
「……その、今はいや」
「なんでだよ!」
「だって、その…」
「俺に幻滅した? 抱いておきながら、そんなことも気がつかないから、幻滅した?」
どうして気がつかなかったんだろう。
倉木の全てを愛しいと思ったのに…
「…そんなことな、い。す、き、だから、今は、いやだ」
「ごめん…」
こんな俺だけど離れて行かないでって強く倉木を抱きしめた。
すると倉木は泣きだした。
どうしたらいいのか、わからない。
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