16
=蓮見side=
ずっと見ていた。
小雪と別れた後の倉木が危なっかしく見えたから。
そう、以前はそんなんじゃなかった。
いつも世界と線を引いて自分の殻に倉木はこもっていた。
でも今は…
歩み寄ってもいいと思っているみたいで…
それは俺とつながった夜からのこと…
…それを嬉しいと思う反面、倉木は純粋だから心配だ。
独り占めできたらどんなにいいかと考えた。
そんな自分は最低だ。
倉木には…
「え?」
少しボーと考え事をしていた間に、倉木が加藤と向き合っていた。
何か話しているみたいだが、ここからはやっぱり聞こえない。
すると、加藤は倉木の手を取ってそこに唇を落とした。
倉木は、小さな抵抗をしている。
だけど俺は一番よく知っていた。
倉木はあり得ないくらいに力がないんだ。
「くそつ」
もう、隠れていられない。
俺は駆けだすと、加藤を殴ろうとした。
なのに、倉木が思いっきり、こけそうになって…
俺は慌てて、倉木を支えることにした。
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