15
=倉木side=
「倉木っ」
反転した世界に、僕は瞳をぎゅっと閉じていた。
すると、蓮見先生の声が聞こえた。
「大丈夫か…?」
わ、蓮見先生が僕の肩を抱いて後ろから、こけないように支えてくれている。
どうしよう、嬉しい…
「うん…大丈夫…」
けど、今、先生に会いたくなかった。
だって、今、僕の右手、先生以外の人に…
それに、まだ加藤は僕の右手つかんだままだし…
こんなところ見られたくなかった。
優しく僕を背中から支えてくれる体温に泣きだしたい。
「…え?」
あれ、蓮見先生?
僕はハッとした。
「朝のホームルーム始まってるよ?」
なのに、どうしてここにいるの?
僕は先生のことが心配になって聞いた。
すると先生は溜息を洩らすと、僕を抱きあげた。
「先生っ下ろして、恥ずかしいって…」
「加藤、その手を放せ、これは俺のだ!」
「……ぁ」
今、電流が走ったように、びりっとした。
「…だよな、倉木。てか、これくらいで恥ずかしいわけないだろ…?」
もっと恥ずかしいことしたじゃないか…そう言いながら蓮見先生は冷たく笑った。
怖い。
さっき、ちょっと嬉しいと思ったけど、やっぱり…
なんか、先生怒ってる?
どうして?
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