12
「俺は、嫌いな奴に話しかけたりしねぇ!」
甘くみるなよって加藤は言いながら、僕の右手をつかんだ…
…あ?
「倉木、どうして、お前は切るんだ…?」
「やっ」
僕は必死になって右手を加藤から隠そうとした。
だって、加藤、僕の、手首の傷跡をじっと見るから。
「力もないのに、抵抗すんな」
「ちょ…や、放して…っ」
「どうして?」
こんなにも綺麗なのに…?
加藤はそう言って、僕の傷口に唇を落とした。
え?
何、これ?
え、なんで?
加藤?
もしかして、消毒?
あれ、でも、もう、傷口はふさがっているし…
え、何これ何これ?
「…ぅん」
急にクチュと吸いつかれて、声が出た。
どんなに僕が右手を引こうとしても、加藤のほうが力が強い。
こうなったら全体重をかけてでも……っ
「うわっ!」
あまりにも加藤から離れようとしたせいか、僕は足を滑らせて、身体が反転していくのを感じた。
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