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「あ、あの、大丈夫…もう、平気」
だから、放してくれてもいいよって僕は言った。
すると彼は思いっきり僕の肩を持って引き離すと、真っ赤な顔をして、
「こけそうになったお前が悪い」
と言った。
きっとそれは照れ隠しなんだろうな…
「うん…あり、がと」
「別にお前に礼なんて言われる筋合いなんかない!」
「うん」
迷惑だったかな…
もしかしたら助けるつもりはなかったのかもしれない…
だったら、僕は軽くお礼を言ったらいけなかったのかもしれない。
でも彼は、違うと首を振る。
「正直に頷くなよ、まるでこれじゃあ、俺ばっか、馬鹿みたいに焦ってるみたいだろ!」
「……ぁ」
そっか、そうだな。
でも今さら僕が焦るのも変じゃない…?
どうしたらいいのか、わからない。
「だ、黙るんじゃない!」
「ご、めん」
彼はどんな形であっても僕がこけないように助けてくれたのに、
僕は、上手く、彼に接することができない。
普段から蓮見先生以外と口をきいたりしないから、どうしたらいいのか…
わからなくて不安で、怖い…
「いや別に俺、倉木のこと責めたりしてないから、顔を上げろ!」
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