「急にごめんね?」

「大丈夫…」

花壇のレンガの上に腰を下ろすと僕たちは空を見上げた。

「この前、廊下ですれ違ったの…倉木くんだったよね?」

「え?」

「ほら、三時間目が始まる時に、こけかけた生徒見なかった?」


……あれ、あれって北王子だったの?


「あ、やっぱり見てたんだ。あれは忘れて…」

今、真っ黒な髪をした、北王子が笑った。
あの日は綺麗な茶髪だった。

失礼だな僕…髪の色が違うと北王子だと気がつけないなんて…


「ごめん…」

「え?」

「僕、全く気がつかなった…から」


それはとても寂しいこと。


「嫌だなあ、倉木くん。大丈夫だよ。今こうして倉木くんが僕と話してくれるのが嬉しい。それでいいよ」

「でも…」

「ううん」

大丈夫だよって北王子は僕の手を掴んで、ゆっくりと首を振った。


「今、ちゃんと倉木くんは理解してくれた。それでいいんだ…」

「けど…僕は…」

上辺しか見ない人が嫌いだった。






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