=倉木side=


「ただいま…」

夜、カギが開いているのを知って、先生は、戸惑いながらそう言った。

僕は玄関まで走っては行けなかったけど、迎えに行くと「おかえり」と言った。


「まだいてくれたんだ」

蓮見先生はそう言って笑った。


「迷惑だったかな…?」

「そんなことない。ずっといてほしいくらいだ」

「…蓮見先生」

ずっとって、それって、どういうこと?
勝手にいい方に解釈して、僕は幸せだと感じた。


でも、僕には、帰らないといけない場所がある。


「倉木、大丈夫、わかっているって」

倉木には倉木の家があるしな、なんて軽く先生は言う。

別に帰りたい家じゃないけど、それでも僕の家だし。

「そう…だから、帰らないと。実は先生の顔が見たかっただけなんだ…」

泣くなよ、自分。

「元気そうでよかった…帰るね」

唇が震える。
きっと、涙はもうすぐ流れる予定を立てている。

これからの関係をどうしたらいいのか、わからないけど、
蓮見先生がいつも通りを望むなら、僕はいつも通りしていよう。

一人が寂しいって知っているから、曖昧なままでもいいよ。

それで、少しでも先生が寂しいと感じなければいい。



僕は永遠なんて信じていないから。



「倉木、これ」

「え?」

そう言って渡られたのはカギだった。
合鍵。

「どうして…?」

僕は意味がわからずに聞いた。
すると先生は「いつでも来いってこと」と言った。



何をどこまで求めてもいいの?







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