21
=倉木side=
先生の顔が近づいてきて、触れる吐息。
僕はぼんやりと見つめていた。
やがて、重なる唇も、温かくて、優しくて、
そのまま溶けてしまいたいような、気持ちになった。
どうしてだろう。
怖くないと感じた。
「ん…ぅん」
だんだんと深くなるキスに、泣きだしたい気持ちになる。
今、安らかだと感じるのに、何処か儚くて不安。
僕は蓮見先生の服をつかんだ。
離れていってほしくないと思った。
「倉木…」
「え、うわあぁ」
床に押し倒されて、その上に先生が覆いかぶさる。
「ごめん、好きだって言ったら、信じてくれる?」
「え?」
「はじめてちゃんと俺たちが会った日、倉木が俺を追いかけてきてくれた…時から、ずっと」
ずっとだよ、と蓮見先生は瞳を細めて小さく微笑んだ。
僕はそれがとてもうれしかった。
今、先生の心の中に、僕は映っている。
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