20
「へ?」
倉木は突然のことに後ずさる。
そこで、俺はハッとした。
「……え、あれ、ごめん!」
キスしようとしていた。
何をしているんだ、俺。
反省してないのかよ…倉木、あの時、気を失っただろ。
怖かったよな、嫌だったよな。
俺みたいな男にあんなことされたら、さ。
倉木はやさしいから、なかったことのようにしてくれている。
倉木はやさしいから、忘れることはしないでくれている。
俺は、倉木のそのやさしさにつけこんだら、いけない。
いけないとわかっているのに、どうしても、どうしても、甘えてしまいそうだ。
君はどこまでなら俺のこと受け入れてくれるのだろう。
「蓮見先生?」
「何?」
「…顔、近い…から」
「いや?」
「いやじゃない、けど…」
「じゃあ、いい?」
「え…?」
俺って本当に最低な人間だ…
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