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お昼休み、北王子が俺に話しかけてきた。
「菅野くん、ちょっとお願いがあるんだけど」
いいかなー?
なんて可愛らしく、お手をあわせられたら、俺は拒否できない。
「いいよ」
行こうか、そう言って立ちあがった。
けど、気になることがある。
「中佐都は、いいのか?」
いつもお昼休みは一緒だったろう、どうして…
ま、俺には関係ないことか。
「…大丈夫」
北王子は何かに耐えるように言葉を紡ぐと、俺の方を再び見つめた。
「わかった、行く」
弁当も食べずに俺は教室を後にした。
廊下に出ると、北王子は「ありがとう」と小さく言った。
とても寂しそうな背中が、俺を悲しくさせる。
どうしたの、きたおうじ。
なかさとが、さびしがっているだろ。
いますぐにでも、えがおにしてやれよ。
言葉にはならないけど、胸のなか、そんな言葉でいっぱいだった。
本当に俺らしくもない。
俺らしくない。
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