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何を、暗くなっているんだろう。
僕は首を振った。
「ねね、一樹、一樹って、好きな子とかいるの?」
決して、一樹の方を向かなかったけど、聞いた。
「え、もしかして図星?」
何も答えようとしない一樹に、僕は不安になる。
わかりきっていたことなのに、昔から。
一樹は、僕のことを好きだと言ってくれても、それは、恋愛感情ではないと。
期待しないはずだったのに、いつの間にか、こんなにもドキドキしている。
どうしよう…
「一樹…?」
「ああ、いない」
「そう?」
「ああ」
たどたどしく否定して、一樹はうるんだ瞳を空に向けた。
嘘吐き。
本当は、いるんだね。
そんなにも、一樹に切ない顔をさせる子が。
「応援、するから、ね?」
「……な、小雪」
「何?」
「俺って、その、そうなのか…?」
困ったような顔をして、一樹は俯いた。
「そうなのかって?」
「やっぱり、そういう意味の好きなのか…と思って」
「え?」
「実は、最近、気になるっていうか、気がつけば見ている奴がいて、それって…」
どうなんだろうな。
と一樹は小さく笑った。
僕は上手く笑えなかった。
嫉妬したね。
菅野くんに。
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