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「…っ!」
俺はあわてて、布団から起き上がった。
夢を見たんだ。
びっくりした。
菅野が、小雪に話しかけていて、俺がそれを遠くから見ている夢。
ただそれだけのことなのに、とっても、やりきれないような
寂しいような気持ちになった。
どうしたっていうんだよ。
菅野なんか、が、どうして、俺の夢に出てくるんだよ。
……俺は、そんなにも、菅野のこと、気にしているのか?
確かに学年二位で、菅野はちょくちょく俺に点数追いついてきていて怖いと感じるけど。
それに、前はそんなんじゃなかった。
菅野は人になんて興味のないような顔をしていたのに、
いつからか気が付いたら、
菅野の周りには人がいた。
ショックだった。
一人なのは俺だけじゃないと思っていたから。
たとえ、一人ぼっちでも、仲間がいたから、ちょっと安心していたんだ。
馬鹿らしい。
菅野の人生は菅野のものだ。
どうして俺がそれに心を痛めないといけないんだ。
はじめは菅野に対するその感情は小雪に会えない悲観だと思っていた。
菅野は小雪に似ているから、気になるんだと思っていた。
だけど、違った。
それが嫌だった。
小雪がいるのに、菅野のこと、見ている自分がいる。
おかしいよな…笑えない。
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