3
「すっごいでしょ!」
最近見つけたんだよ、と小雪は町を見渡した。
ここはちょっとした山の中だった。
「この町ってこんなかんじなんだな」
俺は普段生活している風景を眺めて不思議な感覚になる。
車なんて米粒くらいにしか、見えない。
人なんて、もっと小さくてなんなのかも、わからない…
「一樹?」
「え?」
「大丈夫?」
「ああ」
少し、気圧が違うからボーとしてしまった、とか、俺は言って。
気がついた。
俺だって、小雪にいつも嘘ばっかついていると。
でもそれでもこれは、大切にしたいからだ。
こんな実は孤独感にさいなまれました、なんて言っても、しかたないし、
困らせるだけだ。
いらない。
美しい夢だけを見ていたい。
[*前] | [次#]
目次に戻る→