11
「小雪」
ふと、廊下で呼びとめられて、僕は振りかえった。
そこには優香がいた。
優香は僕の弟。
正確には、半分だけ他人の血が流れている弟。
「馬鹿じゃない!」
優香は突然そう言った。
僕は何の事だかわからなかった。
「小雪は、どうして笑っていられるんだよ!」
この、脳天気!
可愛い顔をきつく歪めて、優香はそれだけ言うと、僕の言葉も聞かずに、廊下に消えていった。
僕は後が追いたくても、追えなかった。
……どうして笑っていられるんだよ!
だって、
何があったって、
それが、
すべてじゃないんだよ。
みんなみんな
ちょっとしたことで
壊してしまいたく、
ないんだよ。
夢は見ないと、損だ。
何も始まらない。
何も求めずにすむ日が…早く訪れたら、
いいのに…
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