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=小雪side=
信じたいと願った。
今度こそ、普通に生きたいと願った。
裏切られることなんて慣れっこだ。
なのに、菅野くんに、抱きしめられた時は必死に逃げ出した。
「賢也。僕、おかしいのかな?」
わからないんだって賢也に泣きついた。
賢也は義理のお兄さんで、
よく、小さい時から、僕は甘えてばかりいた。
「小雪?」
「……なんて。大丈夫。賢也の笑顔見たら、安心した」
「嘘だろ?」
「嘘かな」
僕は笑った。表面上の話だけど。
「賢也。なんでもないんだよ。ありがとう」
僕ももう高校生になったんだし、いつまでも賢也に迷惑をかけてはいけない、そう思った。
それに、賢也に話すことで、一樹の耳にはいるかもしれないことが何よりも怖かった。
ただでさえ、今、たいへんなのに。
「明日からも元気に学校に来るね!」
じゃあね。僕はそう言って笑って見せた。
心配なんて掛けたくなかった。
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