15
「じゃあ、その、泊らせてもらっても…」
「ああ、気にすんな、俺一人暮らしだし」
「…あり、がとう」
「えー今さら改まるなってそれに、悪いのは、俺だし…」
先生はそう言って口元を押さえて、何処か遠くを見つめた。
今、逃避しているってわかった。
だけど、それでもいいと思う。
別に僕のとこだし、そんなに真剣になって考えることでもないし、いっそそうやって何もなかったように、忘れてくれたらいい。
…忘れて、くれたら…いいのに…
だめ、なんでだろう、悲しい。
胸の奥が熱くなって痛い。
痛いよ…
「倉木?」
「何?」
「大丈夫か、気分悪いか?」
心配そうに蓮見先生は僕を見つめた。
その真剣な瞳が、僕を安心させた。
「大丈夫」
僕はそう言って笑った。
先生は、バツの悪そうな顔をして「なら、いいんだけど」と言った。
ああ、先生は
決して忘れる人じゃないと思った。
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