切望・3
「ミチユキ、これで、みんな少しは楽しんでくれるかな?」
「神様は楽しんでくれる?」
「え?」
「なんでもないよ」
じゃあ、行くから、そう言って、ミチユキは地上に降りていきました。
俺はそんなミチユキを見ていました。
毎日、毎日、見ていました。
天使たちも、ミチユキを見ていました。
本当にどこにでもある暮らしをして、本当に小さな優しさを人間に配って、たくさんの笑顔を作っていました。
俺は思いました。
俺たちは普段ここで退屈しています。
そんな天使たちに意味が生まれたら、
こんな人生も楽しいものになるのではないのでしょうか。
俺は集いました。
地上に行って、人間を幸せにする天使を。
一つ、条件として、人間を幸せにした天使にはご褒美として、俺がその天使の願い事を叶えてやると約束つきです。
たくさんの天使が地上に降りたいと俺のもとに訪れました。
俺は嬉しかったです。
あんなにも無気力な天使たちが、こんなにも俺の提案に乗ってくれたのだと。
ですが、結末はいつも楽しいものではないのですね。
みんな口をそろえて言いました「殺してください」と。
俺は拒めませんでした。
願い事をかなえました。
それが、それが、その天使にとっての幸せなのだと思いました。
涙がとまりませんでした。
俺はまた逃げだしたいと思いました。
本田のときだってそうでした。
逃げてばかりの俺です。
それでも、俺はこのゲームを続けました。
もしかしたら、もしかしたら、いつか、この連鎖は止まり、希望が降り注ぐかもしれないと夢みたからです。
[*前] | [次#]
目次に戻る→