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=蓮見賢也side=
はじめて彼の絵を見た時は驚いた。
繊細な奴なんだと思った。
淡い色使いがとても綺麗で、触ってしまったら、もう、その絵に価値はなくなるとさえ感じた。
「賢也、すごいね」
隣にいた義兄弟の小雪が俺のスーツを引っ張りながら、瞳を輝かせている。
なんだ?
今回は何をお願いしてくるんだ?
俺は構えた。
小雪のお願いなら、何でも聞いてあげたい。
だから、どうか俺にできることであるますように、と。
だけど、小雪の口から出た言葉は
「この人に会いたい」
だった。
「いくら、なんでも、それは…」
どこの誰かもわからない、しかも、有名でもなんでもないコンクールの作品だ。
そう簡単に見つけられるわけない。
そう思った矢先
「賢也。この絵、描いた人は、美術部の、えっとね、倉木考示くんだよ?」
「え、まさか、なんで、あいつなの?」
いつも黙り込んだまま、キャンバスを見つけていた倉木。
冷めたような顔して、誰よりも、熱心な倉木。
綺麗な顔しているのに、笑うことをしない男の子。
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