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「土屋!」
夜の雪の向こうから、杉田の声がした。
とても懐かしく感じた。
とても力強く感じた。
俺はまた泣き出してしまいそうになった。
「杉田」
俺は走り出した。
人目も気にくれず、杉田のもとに。
でも、杉田は俺の頬を叩くと「馬鹿」と怒った。
「ごめ…っ」
でも、
「心配したんだ」
そう言って、杉田は俺を強く抱きしめてくれた。
温かかった。
安らかで。
俺にも帰れる場所があるのだと、過信してしまいそうなくらい、生きる喜びを見つけた。
俺はどうしようもなく、杉田が好きなんだなって、改めて感じた。
「ありがとう。もう、大丈夫だから」
俺はそう言って、杉田の中から離れた。
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