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=土屋side=


また、泣いてしまった。
もう、泣かないってきめたのに。

嫌になるな。
俺は、もう、昔の俺じゃないって思っていたのに。
結局は何一つ変われていないんじゃないんだろうか。

「あ」

俺はリビングから出て行った二人の後を追うように、ゆっくりと入口の近くまで行き、そこで、やめた。

聞こえてきた声は、痛く俺の胸をついた。


でも、やっぱりここまできて引き返せない。

俺は、勢いよく、リビングの扉を開いた。

「あの、詳しく聞かせて下さい」

どっからどうみても修羅場なのに、俺は何もかもお構いなしに二人にそう言った。

ケンシロウさんは何事もなかったような顔をして、こっちを向いたけど、その腕の中にいた、ミコトさんは顔を真っ赤にして、ケンシロウさんを突き飛ばして「何?」と涼しげに振り向いた。


「身代金30万って、もしかして、その、誘拐されたって、その」

「ああ、ケンシロウの父さんだ」

ミコトさんは「今更隠してもしかたないし、いいや」と話してくれた。






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