84




「そんなことよりも、身代金どうすんだよ?」

俺は話を戻した。

「どうするもこうするもないだろ。もう、俺、やっぱりこんなことは間違っていると思うんだ」

健志郎はここにきて、今更、そんなことを言う。


「間違っているって、他に何か方法でもあったのかよ?」

そうだ、こうすることしかできないから、こうしているんじゃないんだろうか。
誘拐だなんて、俺のちんけなプライドが許さないのに、こんなにも協力してきたのに。


「簡単なこと言うんじゃねーよ! お前の父さんどうすんだよ! 明日までに30万円用意できんのかよ!」

「ミコちゃ…」

「甘ったれるなよ!? 時に汚れなきゃ何も守れないんだよ、それくらい、わかれよ、綺麗事じゃ、何も、生まれない、って、そんなこと」

やばい、俺も泣き出してしまいそうだ。
香月のせいだ。
きっと泣き虫を伝染させられた。

「…っ」

え? ええ?

「ミコちゃん、ごめんね」

そう言って、健志郎は俺を強く抱きしめてくれた。
こいつ、こんなにも、大きかったっけ?






[*前] | [次#]
目次に戻る→


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -