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=杉田side=
正直、こうして土屋誘拐事件を解決するべく、俺たち三人は此処に集まったのだが、大切なことを失念していたみたいだった。
「今更、悪いんだけど、土屋ってどこにつれていかれたんだろ」
俺は手がかりも何もないのだと告げた。
すると、土屋弟は腰を抱えながら、うつむいた。
「そんなあたり前なこと、考えてもいなかった」
「ナオキくん、そんな落ち込まないで」
「佐田先生…」
「え、ちょっと」
土屋弟、いや、ナオキはクズクズ言いながら、佐田さんに抱きついて泣いていた。
さっきからなんか、弱々しくないか、こいつ?
「そんなことよりも、土屋を」
俺は催促した。
だって、どうしたらいいのかわからないけど、何もせずにいられない。一刻も早く、土屋を。
でも、何をしたらいいのかわからない。
どうしたらいいのだろうか。
ただ早く土屋に会いたい。
早く無事にしている土屋に会いたい。
胸が張り裂けそうだ。
不安で不安でたまらない。
「兄さん、今、どこなんだろう」
ナオキはそう言って、俺を見つめた。
そして「車のナンバーは?」と言う。
残念ながらそんな余裕はなかった。
俺は首を振った。
ナオキは悲しそうな顔をして「あんたが悪いんじゃない」と言ってくれたが、俺はそう思えなかった。
もっと俺がしっかりしていたら、土屋は…
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