80




=杉田side=


正直、こうして土屋誘拐事件を解決するべく、俺たち三人は此処に集まったのだが、大切なことを失念していたみたいだった。

「今更、悪いんだけど、土屋ってどこにつれていかれたんだろ」

俺は手がかりも何もないのだと告げた。
すると、土屋弟は腰を抱えながら、うつむいた。

「そんなあたり前なこと、考えてもいなかった」

「ナオキくん、そんな落ち込まないで」

「佐田先生…」

「え、ちょっと」

土屋弟、いや、ナオキはクズクズ言いながら、佐田さんに抱きついて泣いていた。

さっきからなんか、弱々しくないか、こいつ?


「そんなことよりも、土屋を」

俺は催促した。

だって、どうしたらいいのかわからないけど、何もせずにいられない。一刻も早く、土屋を。

でも、何をしたらいいのかわからない。
どうしたらいいのだろうか。


ただ早く土屋に会いたい。

早く無事にしている土屋に会いたい。

胸が張り裂けそうだ。
不安で不安でたまらない。


「兄さん、今、どこなんだろう」

ナオキはそう言って、俺を見つめた。
そして「車のナンバーは?」と言う。
残念ながらそんな余裕はなかった。
俺は首を振った。
ナオキは悲しそうな顔をして「あんたが悪いんじゃない」と言ってくれたが、俺はそう思えなかった。

もっと俺がしっかりしていたら、土屋は…






[*前] | [次#]
目次に戻る→


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -