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憧れだったのかも。
空っぽの俺は、偽ることしか知らなかったから。
嘘の世界を築いて、わかったんだ。
中佐都…あんたのせいだ。
あんたにさえ、会わなければ、気付かずにいられた。
ただ自分の外のもの全て否定して。
俺は自分だけを知っていたらよかったんだ。
悩むことなんて、知らずにいたかったんだ。
一人なら、何も、いらないんだ。

ああ、望んでしまったからだ。
淋しげな、俺みたいな、あんたが、どうしてか、一人には見えなかったからだ。
いつもクラスの輪を見つめて、お一人様なのに。
なんだ…俺はただ悔しかったんだ。

友達になりたかったんだ。

きっとただただ仲間意識を裏切られた気がしたんだ。
違う。一緒だと思っていたのに…

完全な一人相撲なわけだ。
涙が流れた。

俺はあんたにないものを手に入れても、
俺はあんたのようにはなれなかった。


「菅野くん」

北王子が輝いて見えた。
あんたの一番近くにいたからか…。

中佐都。あんたは、だから、
弱くて強いんだ。

俺と同じじゃない。
偽りじゃない。
嘘じゃない。

俺がなりたかったのは、北王子で中佐都で。


「いいよ、いいって」

疑いもあった。
だけど、ずっと見ているうちに気付いたよ。
北王子は本物の聖人君子だったね。
自己陶酔しない。
むしろ、人の傷みを引き受けている。
俺とは違う。
違いすぎる。
上っ面だけじゃない。


嗚呼、北王子。君が欲しい。
からっぽな俺が君を求める。

その時、俺は生きていた。
その時、俺の世界は動き出した。


君を中心にして…


まわりはじめた。




第一話 完結






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