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「?」
何か、雑音が聞こえてくる。
俺は振り向いた。
そこには携帯があった。土屋の携帯だった。
画面は通話中のマーク。
俺はおずおずと携帯を耳にあてて「もしもし」と言った。
すると「兄さんは?」という、土屋弟の声が聞こえてきた。
俺は正直にことの説明をしたら、土屋の弟は「そう」と一言口にしただけだった。
「どうしたんだよ…怒らないのかよ、俺、土屋のこと助けられなかった」
何もできなかったんだと自己非難した。
だが、土屋弟は「それを言うなら」と呟いた。
「俺が悪いんだ、もとは…」
だいたいの事情を俺は土屋弟に聞いた。
「けど、俺があそこで助けていたら、よかった話だ」
俺はそう言った。
「違う、俺が、電話なんかしたから」
土屋弟は言う。
「キリがないだろ!」
「「?」」
急に俺と土屋弟以外の誰かの声がした。
俺たちは首をひねった。
「今はそんなことよりも香月くんの心配をしなさい!」
ばかばかばか、とその人は言う。
香月、というのは土屋の下の名前。
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