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=杉田side=


星がとてもきれいな夜だった。
俺は土屋を見送って、そのまま家に帰るべく夜道を歩いていた。

するとさ、見覚えのある顔をした、二人組とすれ違った。

誰だっけ。誰かに似ていたんだけど、正直思い出せない。誰だったっけ。

誰なんだろう。
わからない。わからない。

「気のせいかも」

暗かったし、知っている誰かに似ているような気がしたんだろう。

思い出せないってことはその間違えた誰かでさえ、俺はあまり印象に残すような人でもなかったんだろう。

そう思って、星空を見上げた。
綺麗だ。
人は簡単に、星に名前をつけて、線をひいて、特別を作ったり、星座をつくったりするけど、俺は、そんなこと、気にしない。

ただ、いいじゃないか。
綺麗だって、それだけの事実で。

それ以上に何を求めるものがあるんだろう。

どうして、そうやって、差をつけてしまうんだろう。

とっても遠い場所から、この地球に、光を届けていることだけでも表彰もんだろ。
それに…


「……どうしよう、センチメンタルだ」


くよくよ考えるのはよそうと、俺は首を振った。
すると、視界の端に、土屋が見えた気がした。
病気なのか、これは、土屋に会いたい病か!

今さっき家に帰っただろうし、暗い時間帯は外にでるなって俺は言っておいたし、そんなはずがない。と、思いながら、も、俺はつい、その土屋らしき人物が走って行った方に足を向けた。






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