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俺は焦った。

何回も何回も「兄さん」と呼びかける。
だんだん、のどが裂けるんじゃないかっていうくらいの声で。

でも、返事はなかった。


俺が、電話なんてしなければ、こんなことにはならなかったんだ。

昔からそうだ。
俺が、兄さんに甘えるから、兄さんは、損ばかりしている。

損ばかり。

なのに、俺はそれで満足していたんだ。昔は。


だって、兄さんの全てが欲しかった。


それが間違いだって、さっき、俺は身をもって知った。

兄さんには兄さんの意志がある。
だから、それをないがしろにするようなことをしてはいけない。

俺には俺の気持ちがあるように、
兄さんには兄さんの意志があるんだ。

そんな簡単なこと。

なのに、俺はついさっきまで気もつかなかった。



最低…っ







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