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「覚えといて、今から、ナオキに触れるのは俺だよ。俺なんだよ…」


最後にそう言って、矢田は俺に触れた。
俺の知らない、俺の深い場所も探り当てて、自分のものをそこにいれて…

満足そうに瞳を細めた。


そして、矢田はハッとした顔をして、とても後悔したような顔をして、何か言おうと口を何度か結び、結局は何も言わずに、ぐったりとした俺をそのままに帰って行った。

一人、残された俺は、痛む腰と心を抱いて、携帯に手をのばした。


無性に兄さんの声が聞きたいと思ってしまった。

だけど、電話にでた、兄さんの声がどこか楽しそうで、嫌になった。

それに会話の内容が思いつかない。
どうして、俺、電話なんて掛けたんだろう。

こんな状態なのに何を考えているんだろう。


俺は何も言えずに電話を切った。


だって、兄さんに合わせる顔がないと思ったんだ。

友達に押し倒されて、襲われました。

腰以前に、あそこがさけていたいです。とか、言えるわけもない。

だけど、だけど、甘えたの俺は、つい、兄さんにそう言ってしまいそうだ。

兄さんならなんだって、否定しないし、受けとめてくれるから。だから。
大丈夫だよって、言って欲しいと願った。


俺がそばにいるよって言って欲しかった。






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